旧)今日もヨミトル!

あなたがわかっていること、伝えたい

そしてテレビの大事な話

前回までの記事「テレビから、イクコさん」の、イクコさんのケントさん訪問につながったきっかけは、ケントさんが

 

テレビは こころで みる

 

と書いた言葉でした。

 

そこで、今回はテレビの話です。実はテレビの話といっても番組の内容のことではありません。読み取りの過程で起こったテレビの文字表記のことをお話ししたいと思います。

 

本ブログの「ハイジなの?」の記事で書いた通り、読み取りをする時は、ケントさんや美津恵さんには文字はすべてひらがなで書いていただいています。あと、数字と○と×を使用しますが、今は文字の話に限定します。


通常私達が日本語を書く時、皆、漢字とひらがなとカタカナを混ぜて文字を書きます。その混合の割合は人それぞれで、世代やその人の興味、また書き表す文章のジャンルなどによりその割合は異なります。

読み取りは、ケントさんや美津恵さんが書く文字の一画、一画を読み取っていき、何の文字か判断するので、漢字、ひらがな、カタカナのすべてからだと候補の数が膨大で判定するのにとても時間がかかります。特に漢字は画数が多いです。閉じ込め症候群のケントさんや美津恵さんが一所懸命書いてくれる文字です。できるだけ正確に、そして迅速に読み取りたい。

ひらがなとカタカナは共に50文字。選択するのはひらがなでもカタカナでもどちらでもよいような感じがしますが、元々私が、先行実践者の方から読み取り方を習った時に、最初がひらがなだったこと。また、これは後になって実感したことですが、カタカナよりもひらがなの方が単語や文として文字を続けて書いていく時に、つながりというか、流れを感じやすい気がしています。

 

いずれにしても、私達は普段当たり前のように無意識に漢字とひらがなとカタカナを混ぜて書いていますから、想像してみてください。実際に文を意識してひらがなだけで書こうとするとたいへんです。かなり集中力とエネルギーが要ります。実際に、脳卒中の患者さんの言語リハビリとして新聞記事などを全部ひらがなにして書き直す訓練が行われるのを見学したことがあります。

 

では、ケントさんや美津恵さんはどうでしょう。実にすらすらとひらがなだけで書くのです! そして「ひらがなで書く」ということをちゃんと意識して能動的に書いていることがわかるのが、時々ついカタカナや漢字で書いてしまうことがあることです。

 

それが、今回のケントさんの場合「テレビ」でした。実は最初にケントさんが「テレビ みる」と書いた時、「テレ」とカタカナで書き始めました。そしてすぐ一瞬書くのを止めて、「てれ」と書き直して「び」と続けたのです。

ケントさんがやろうとしたことはすぐわかりました。私は「あ、大丈夫です。テレビはどうぞカタカナで書いてください」とお伝えしました。そして「ありがとうございます」と続けました。

つい習慣で書き慣れたテレビというカタカナが出てしまったけれども、読み取りに関する私との取り決めでひらがなで書くということになっていることを意識しているから、それを実行しなければというケントさんの判断と私に対する気遣いでした。

 

その時にとても感じ入るものがありました。重度の脳梗塞で大脳が広く損傷しているという診断を受けたケントさんです。四肢麻痺で発語も全不能です。でも、読み取りでは、普通でもなかなかスムーズには書けないオールひらがな書きをしっかり実践しています。そして、ひらがなで書いてくださいねと言われているのに、つい慣れているカタカナ表記で「テレビ」と書き始めてしまい、自らそのことに気づき、すぐかな書きに訂正しようとされたのです。

 

同様のことが、つい最近美津恵さんんとの読み取りでも起こりました。先日美津恵さんと音楽の演奏の話をしていた時、美津恵さんは「みんなで」と書き、そして続けて左はらいの線を書き、そこで一瞬止まり、それからひらがなの「が」を書き「っそう」と続けたのです。私はすぐ美津恵さんに言いました。

 

「美津恵さん、わかりましたよ!『合奏』の『合』の字で書き始めて訂正されたんですね!」

 

ひらがなで書くという約束事をしっかり守ってほぼ完ぺきに書き、つい慣れている漢字が出てしまったけれども、すぐに気が付いて訂正。

 

これを脳の高度な処理と言わずしてなんと言うのでしょうか。

 

これは一体どういうメカニズムなのでしょうか。脳のこと?神経のこと?

 

いつも思うのです。人間の体は本当に不思議。そして、本当にもどかしくて切ない。ケントさんも美津恵さんも、こんなに普通、どころか、繊細な判断と実行ができているのに。

 

ただその表出が今はまだ外から見えないから、わからないと思われてしまっている。

 

ケントさんや美津恵さんが表出する意思が誰にでも明らかに伝わりますように。早くそうなりますように。科学技術よ、早く!

 

すみません、ケントさんや美津恵さんのもどかしさを思い、そして本当はわかっているけれどまだそれが明らかになっていない方々のことを思い、つい力んでしまいました。

長い記事となりました。

お読みくださりありがとうございま。皆さまの温かい関心に感謝申し上げます。 

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