熱き心に(7)動いてますね…の奇跡?!
タカシさんのテーマソングって
何の曲でしょう。ワクワク。
先生は著名なバイオリニスト。
きっと誰もが知るクラシックの名曲?
タカシさんのテーマソングで
さあ、音楽療法の始まりです!
♪ズン ズン ズンドコ♪
え…。
「タカシ~」イッシーが突然隣で叫びました。
ええっ?!
♪ズン ズン ズンドコ♪ 奥様も「タカシ~♪」。
バイオリンの貴公子から、まさかの
ズンドコ節
の調べ。
うーん、やられた。
軽快なリズムに
生のバイオリンの音色。
そして
「タカシ~」の掛け声。
楽しくて気持ちもとてもアップします。
タカシさんの身体にきっとすごく良い刺激が届いています。
「いつも最初の曲はこれに決まっていて。
お父さんのテーマソングだもんね。
先生はクラシックの専門家ですけど、
ジャンルにこだわらず、
気軽に何でも弾いてくださるんです。タカシ~♪」
手拍子と掛け声をしながら、
タカシさんに話しかけながら、
奥様が教えてくださいました。
そして、私も手拍子をしながらふと見ると、
タカシさんの手が少し上がって動いています。
あ、タカシさんの手、動くんだ。
さっきのヨミトリの時は、初めてだから
きっと緊張していらしたんだな。
やっぱりリラックスって大切なのね。
先生の演奏中、タカシさんの手が動くのを見て
とてもうれしくなりました。
なぜなら、
動くなら、きっと文字も書けるから。読み取れるから。
そうか、そうか。タカシさん手が動くんだ。いいぞー「タカシ~♪」
タカシさんのズンドコが終わりました。
私は早速感想を言ってしまいました。
「いいですね~。生の音がいい。テンポがいい。掛け声まで入って。
タカシさん、テーマソングをお持ちなんて贅沢ですね~」
はしゃぐたかぎ。
ところがなぜか先生、奥様、イッシーは違う雰囲気です。
「手、動いてましたね」と先生。
「はい、動いてました」とイッシー。
え?
再び先生。「手、動いてましたね。動いたところ見たことないですが」
「はい。いつも硬く、手出してくださいと言っても全然動かないのに。
動いてました」と再びイッシー。
奥様「私、手が動くところ見えなかった。
顔が、お父さんの表情がいつもと全然違って、
ずーっと顔見てた…」
再度、先生。「よく動いてましたよ。すごいな」
イッシーが茶目っ気たっぷりに言ってくださいました。
「さっきたかぎさんが、ちょっと準備運動をしてくれたので」
先生、「ああそうなんですか」とおっしゃりながら、
不思議そうな表情です。
そうか、私は今日初めてタカシさんとお会いして、
手が動くところを拝見したので、
状態が良ければ普段も手が動くのだと思ったのですが、
タカシさんの手は今まで全然動かなかった?!
そういえば、
意思疎通ができなくなって5年とお聞きしたけれど、
その前からきっとお体の動きは不自由になられていたはず。
ご自分で字を書く機会がなくなって、
いったい何年になられるのだろう。
それがヨミトリの導入で、
横線、縦線、〇と/と、どれもシンプルな線ながら、
久しぶりにご自分で書かれたことで、
刺激が伝わり、身体が動きを思い出された!?
そしてお顔の表情にも変化があった!?
もしそうなら、
これからどんどん一緒に書いたら、
さらに手が動きを思い出すかも。
完璧に取り戻すことは難しいかもしれないけれど、
少しでも動かせたら、
ICT機器で文字入力もできるかも。
表情の変化が今よりもっと出せたら
コミュニケーションももっととれるかも。
なにしろ現代は、
顔のシワ1本の動きでも、スイッチで拾って
信号で送れる時代といわれているのです。
無責任な妄想はだめなのですが、
でも、
No Promises. Just Possibilites.
(確約はない。でも、可能性はある)
ライフワークとしてヨミトリを行っていくにあたり
掲げている言葉です。
けっしてあきらめず、
タカシさんにたくさん書いていただいて、
タカシさんが紡ぐ言葉を、
全力でヨミトリます!
(続きます)