旧)今日もヨミトル!

あなたがわかっていること、伝えたい

テレビから、イクコさん その4 

 テレビの紀行番組→イクコさんに会いたいというケントさんの意志表出から繋がった訪問。

イクコさんは忙しい時間の合間をぬって定期的にケントさんに会いに来られているのですが、今回はケントさん直々のご指名のリクエストです。張り切って、ケントさんと共有できる旅の話題を持って来てくれました、のはずだったのですが…

 

「昔夫と行ったカナダ旅行の写真持って来たよ。懐かしいでしょ。ケントさんもカナダ行ったことあるもんね。」と、ケントさんにアルバムを開いて見せながらイクコさん。

 

ケントさん:ない

 

「え…、ない? なかったっけ?」

 

カナダは いったこと ない 

 

シーン。

イクコさん、ケントさんの妻ルミコさん、たかぎ、そしてケントさん。一同、沈黙。

 

どうしよう。ケントさんと私も所属するNPOのボランティア長老にして数々の輝かしい功績と今も各種要職に就くイクコさんの記憶違いを指摘するような、恥をかかせてはいけないのに。1文字ずつ読み上げている私も、なんとなくバツの悪いような申し訳ないような。

元々ケントさんは明るい性格ながらあまりお愛想を言わず率直にものを言う性格で、これが顔の表情でも出して笑いながら言えばコミュニケーションとしては全然問題ないけれど、ケントさんは表情筋を自分の意志で動かすことができないため、無表情から書いて表出する言葉だけがすべてというプロセスが、きっぱり感を更に増幅してしまう。

 

お読みくださっている皆様、しつこく何度も申しますが、笑ってくれないと「うれしくないのかな」「聞こえないのかな」「わかっていないのかな」とつい思ってしまうのですが、遷延性意識障害や閉じ込め症候群と言われている方々は、それは笑いを表すための表情筋を自分で動かせないだけということが確かにあるのです。ケントさんが、美津恵さんがそのように言っています。

あなたがうれしくて、おかしくて笑う時、きっとあなたの大切なその方も笑っています。どこかで聞いたギャグ、面白いと思った動画、ぜひ見せて差し上げてください。そしてあなたがうれしいと思う時、おもしろいと感じる時はぜひ「面白いよね。うれしいよね。」と話しかけてあげてください。きっと喜ばれると思います。共に笑っているという実感がその方の希望と気力につながると、私は信じます。

 

「あれ~、ケントさんカナダ行ったことなかったっけ」とイクコさん。「ほんとに?なかった?」

 

ケントさん:ない

 

「そんなら誰かと間違えてるかしら。誰だったやろ…」関西地方の柔らかいアクセントの温かいささやきが一瞬止まりました。ケントさんではなくて誰がカナダに行ったのか、思い出そうとしているご様子。そしておもむろに言いました。

「これが氷河。見える?きれいでしょ。これ、私の夫」

 

ぷっ。イクコさんの何事もなかったようにいきなりのアルバムへの復帰がかわいらしくて、かがんでケントさんの手を取っていた私は下を向いたままこみあげる笑いをこらえるためにピクピクしてしまいました。

ケントさんに「コメントはありますか。」と聞いてみました。

 

(続きます) 

 

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